それは一枚の広告で、国立新美術館と、サントリー美術館で同時開催される「巨匠ピカソ展」の案内が、半々で記されていました。
左側が国立新美術館の詳細、右側がサントリー美術館の詳細で、両端には「目玉」と思われる、趣の違った別々の絵が載っていたんです。あたしの目に留まったのは、右側の絵。それは、サントリー美術館に展示されるのであろう、男性の肖像画でした。
こういうこと言うと、「イタイ人」って思われそうなんだけど、あたしはその広告を目にしたとき、男性の肖像画と、「目が合った」って思ったんです。
じっと見てるとますます目が離せなくなって、ぜひこの絵の実物を見てみたい、見に行こう、と思いました。
ちょうどその数日後、本屋に寄ったら、雑誌「Pen」が、ピカソの特集を組んでいたので、予習復習用に買ってみようかなー、と思いながらパラパラと立ち読んでみた。
あたしが知ってるピカソ情報と言えば、「青の時代」があったとか、作品で言えば「海辺の母子像」、「ゲルニカ」を知ってるくらいで、そのほかに知ってるのは、年の離れたジャクリーヌを後妻に迎えて晩年を送った、とか、そんな程度。
だから、今回の「魂のポートレート展」の広告に使われていた男性の肖像画がなんなのかも、全く知らなかったんですね。
「Pen」をぱらぱらとめくっていたら、広告に使われていた男性の肖像画も紹介されていました。
「日本初公開」という紹介文を読んで「へえ〜…」と思った直後、この絵のタイトルを見て、戦慄が走りました。
なんでかっていうと、あたしが、「目が合った」と思って、目が離せなくなった男性の肖像画が、ピカソの自画像だったから。
それがこの絵。

「自画像」
「亡くなった友人、カザジェマスを思いながら青を用い始めた」とピカソは語っている。1901年のこの自画像は青の時代、20歳の時の作品で日本初公開。自画像をテーマにしたサントリー美術館の展示の冒頭を飾る代表作だ。(雑誌「Pen」10/15号P75より抜粋)
きっと、人が聞いたらバカバカしいんだろうけど、その絵が自画像であるという事実を知ったとき、「あたし、ピカソと目が合ったんだ!!」って思ったんです。ね。バカでしょ。でも、ほんとにそう思ったの。
もとから見に行く気でいたけど、これは絶対に絶対に見に行かなくてはいけない気がしました。
そんでもって、行くなら、展覧会の初日に見に行こうと決めたのであります。
以前も、ブログの中で引用したことがありますが、「怖い絵」という、絵画のメタファーなどを紐解いてある本の中で、
小説ではあるが、『フランダースの犬』の中で主人公ネロが、ルーベンスの『キリスト昇架』を見たくてたまらず、ついに無断で教会へもぐり込んでこの傑作を目の当たりにした時、『ああ、神さま、もうぼくは死んでもいい』とまで思う。それほどの深い満足を与える力が、かつて絵画にはあったのだ。
という一文があり、この内容に、とてもゆさぶられたんですね。
あたしは、絵の良し悪しなんてまったくわからないし、おそらく、これからも、わからないと思う。
だけど、自分が何かしら心を動かされたのであれば、それに抗う必要なんて全くなくて、むしろ、素直に従ってみようと思ったんです。企画展の封切日に、美術館を一人で訪れてみようなんて思ったのは、人生初だったし、思っただけじゃなくて、モノグサが服を着て歩いているようなあたしがそれを行動に移したのだから、これが、「絵の力」なのかなって思いました。
絵画のスゴさなんてまったくわからなかったし、小学生の頃なんて、誰かがワザと変な絵を描けば「あ、ピカソだピカソだ」とかちょっとバカにして言ってたくらいですから(あたしだけでなくね)、ピカソに尊敬の念を持ったことは一度もなく、有名すぎるほどに有名だけど、ピカソの絵を好きだと思ったことなんて一度もなかった。
ポーラ美術館に行った時に、海辺の母子像の実物を見て、同行者が「この赤を描きたかったんだよね。ピカソは」って、母親の持つ一輪の赤い花を指したときに、ピカソのおかげというより、同行者の注釈のおかげで、ほんの少し絵の持つ奥行を感じられて「へ〜」と思ったくらいで。
でも、今回、ピカソの友人だったというカザジェマスの、簡単な背景を美術館で知ったからというのもあったのでしょうが、この自画像を見たときに、「絵を見て目頭が熱くなる」という初めての経験を味わいました。
カザジェマスは、悲恋の末に、自分で引き金を引いてこめかみを撃ち、若くしてその生涯を終えたのだそう。今回の、サントリー美術館での展覧会では、「カザジェマスの死」という、こめかみに銃弾の跡の残る、息を引き取った後のカザジェマスを描いた絵も展示されていました。
ナマの絵に迫力があるとかそんなんじゃなくて、いや、もちろん、もりもり描かれた油絵なんかは、絵の具による凹凸なんかもわかって、迫力ありますけど、それよりも、実際に、このキャンバスの前に、画家本人が立っていた時間もあったのだということに思いが巡らされて、感慨を覚えますね。
見たことのないアトリエの風景なんかも想像しちゃって、そのときの気候はどうだったんだろう、とか、描いているときにジャクリーヌなり、過去の恋人なりが、「ピカソ、お茶入りましたよー」なんて声をかけてくることもあったのかな、とか思ったりして。
描いた画家自身が没した後に、他人がアレコレと憶測で論じている評って、ちょっと白けた目で見てしまうし、画家本人が絵に込めた真意を他人が読み取るなんて無理なんじゃないの、と思っているので、絵画のメタファーとかはどうでもいいんだけど(まあ、多少思いを馳せてみることはありますが)、単純に「あ、いいな」とか「あ、これ好きだな」くらいの感覚で、これからも、目に留まったものだけをちまちまと見に行けたらいいなって思っています。
好きか嫌いか、気になるか気にならないか、絵を見る時の心持なんて、そんなんでいいんじゃないのかなーと、思う、アート音痴の奈々っぺなのでした。

「ゲルニカ」

サントリー美術館入り口。

今回の展覧会「巨匠ピカソ愛と創造の軌跡/魂のポートレート」の図録は美術館で購入。
(図録は、サントリー美術館のオンラインショップで買えるみたいです。)
下は、数日前に買った「Pen」。

PLAY BOYでもピカソの特集組まれてました。
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先に日記の方でちょろっと書かせていただいたのですが、嬉しいコメントありがとうございました(ノ∀‘*)ゝ
しかし、あれだけ褒めていただいているのを見ると、ほんとにあたしだったのか、自信がないです。
エスカレーター近辺で、とおっしゃっていましたが、サントリー美術館のフロアのエスカレーターなのでしょうか。それとも別のフロアでしょうか。って、別にこんなしゃかりきになって突き詰めなくても、って感じなんですけど(笑)
>私も近所にちょっと前、ルーブル美術館展が来てて、行きたいね〜なんて友達と話してたらいつのまにか終わっていたんです(>_<)
ルーブル美術館展!!それはすごく魅力的ですね〜!!
今は上野の国立美術館に行きたいね、とおなじみあいちんと話しているのですが、今回展覧会を見て思ったのは、美術館って一人で見た方がいいかも、ということ。
絵画に詳しくても詳しくなくても好きな絵で立ち止まれて、好きにスルーできて、気がねなく見られるので、一人鑑賞が気楽だなーと思いました。
★maicoさん
彫刻の森美術館は有名ですよね〜!ポーラ美術館に行った時にもいたるところに彫刻の森美術館への道標がありましたし、箱根ではとってもなじみの深い美術館なんだろうなと思いました。
>大袈裟な話「この人とは魂が繋がってるんだわ」と思ったものです・・・。
ああ、わかります!でも、そういう風に思えることって、あたしはとっても素敵なことだと思いますよ!!
>アートは好きか嫌いか、惹かれるかどうか、だと思うので、(美大出身ですが・・・;)
美大卒の方に言われると、俄然、開き直れます(笑)
あと、長いとか、全然気にしないでくださいね!!(笑)
★亜蓮さん
亜蓮さんお久しぶりです!
今回、この記事を書いたときに、まったく根拠はなかったんだけれども、亜蓮さんから何かアクションがあるような気がしていたのです!っていうのも、亜蓮さんも好きそうだな〜って、勝手に思っていて。だからちょっと、運命を感じてしまいました(笑)
亜蓮さんのブログはのぞき見ばかりですが、私は亜蓮さんの感性や、マシュマロでくるまれたような表現がとっても好きなので、ブログが更新されるのをいつも楽しみにしています♪
今度は私の方もお邪魔させていただきますね!!
なげっっ!!
小窓では気付かず、承認されて初めてわかりました;
すんまへん・・・。
通りすがりにお邪魔させて頂きました^^ 応援ポチッ!!
宜しければ私のところにも遊びに来てくださいね♪
わたしのなかのピカソは「本名がめちゃくちゃ長い」「キュビズム」とかあとはやっぱり「ゲルニカ」
「ピカソ新聞」(…)を中学校の時に書いた数少なすぎる情報です。笑
でも奈々さん同様「これは見に行くしかない。」と赤い糸を感じてしまって。
絵に対して誇張でも比喩でもなく「命懸け」で、表現方法ひとつに対しても全身全霊で模索する当時の画家たち。
絵の価値は全くわからなくて、見て心で感じる絵の見方しかできないのですが。
奈々さんがご紹介されている「pen」読んでみたいと思います♡
素敵な情報ありがとうございます♪
わたしもピカソの認識は、ゲルニカと小さい頃から行っていた「箱根 彫刻の森美術館」のピカソ館くらいでしたが、以前に東京都現代美術館のピカソ展へ行ったときに認識が変わりました。
圧倒されるほどの力強さや、目頭が熱くなるような切なさと併せて、噴き出すようなユーモアもある引き出しの多さを知って、初めて「好きだなー」と思いました。
その当時付き合っていた彼と見たのですが、いちいち立ち止まるところが一緒で、二人で黙ってたり、大笑いしたり、とにかくツボが合ったので、大袈裟な話「この人とは魂が繋がってるんだわ」と思ったものです・・・。まぁその彼とは終わったわけですが。
そんなとんでもない勘違いを引き起こさせるのもアートの力なのかもしれません。だけど奈々っぺさんの言うとおり、アートは好きか嫌いか、惹かれるかどうか、だと思うので、(美大出身ですが・・・;)そこの感性が合うかどうかって判り辛い分、素敵なことだなと今でも思います。
と、私事を投げたりしてすみません。奈々さんの文章を読むと、つい語りたくなってしまいます。
今年は横浜トリエンナーレもあるし、この秋はアート三昧ですね!
私も近所にちょっと前、ルーブル美術館展が来てて、行きたいね〜なんて友達と話してたらいつのまにか終わっていたんです(>_<)
絶対いっときゃよかったと、今さらだから思うんですけどね。
ちなみに小学校の時、わざとヘンな絵描いてた子も
「ピカソピカソ。」って言ってましたよねー!














































































































































































