スズキくん

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知ってたことだけど、私は、読書感想文が下手です。

その本の内容にフォーカスすることよりも、目に入った文章が引き金になって、そこから派生するあれやこれやについて考えてしまうばかりで、つまるところ、私が本を読んで思うことと言うのは、本編とは関係のないことばかりなのです。

例えば昔の記憶が蘇ったり、物語の白眉とは呼べないような細かい部分で、「私の場合」について考えてみたり。

今回もそんなようなことをつらつら書いているだけなので、「ブックレビュー」と思って読むと期待はずれだと思います。はは。

津村記久子さんの新刊(と言っても発売されたのは8月末なのですが)「エヴリシング・フロウズ」は、中学3年生の「ヒロシ」が主人公で、ヒロシを取り巻く世界、つまりはヒロシを中心とした「中学生」、もっと細かく言うと「中学3年生」の世界が描かれています。

今となっては「どうでもいい」としか思えないけど、当時はそれが全てであった教室内のヒエラルキー。
普段は思い出しもしない中学生の時の記憶がするすると蘇ってきて、しかもなかにはまったくほんとに忘れていたこともあって、それらを唐突に思い出したこと、そんな記憶が残っていることに驚きました。

なんとなく、昔の記憶というのは大抵都合よく脚色されていたり、逆に言うといいあんばいに褪色していたりして、結果的には「そんなこともあったねえ〜」って好意的に振り返られるものばかりなのですが、私の中学時代は、今ジャッジしてみても、総評は、「楽しくなかった」なんですよ。

際立って嫌だったことをすぐさま挙げられるわけでもないのに、いや、挙げようと思えば挙げられるんだけど、それが決め手と言うわけではなくて、ただ、うすぼんやりと、なんかヤ〜な印象。

先日、川上未映子さんの「きみは赤ちゃん」を読んだんですが(これね、号泣しましたよわたし)、読み終えたあとに、同じく川上さんの著作である「ヘヴン」について書いた「14歳の罪」という日記を読み返していたんですね。改めて読んでみて、こういう苦いこともあるから中学時代の印象がよくないのかもしれないなあと。ここに書いてあることを読むと、少し分かってもらえるかもしれません。

小学校・中学校・高校の中で、いろんなことが一番「陰湿」だったのが、中学時代なんですよ。
それは「自分以外が」というわけではなくて、その環境に居た私も含めて。

うちの中学校は、1:2:7くらいの比率で、A小学校・B小学校・C小学校輩出の生徒たちが集まっていた中学だったんですね。

私は一番生徒が少ないA小学校出身で、うちの小学校の生徒は80%がもうひとつの中学に行ってしまい、私と仲の良かった友達は、それはもうキレーに、全員そちらの中学に行ってしまいました。

一方、うちの中学校で一番人数の多かったC小学校出身者は、私立に進む子以外、まるっと全員がそのまま一緒に進学するんです。
なもんで、C小学校出身者っていうのは、私と同学年だけでなく、学校全体を通しての最大勢力でした。

しかもC小学校の校区にはものすごく大きな市営住宅があり、当然そこに住んでいる子がすごく多く、それはC小学校のマジョリティーと言えるくらいの人数でした。それはすなわち、中学校全体のマジョリティーでもあったわけです。

しかもその結束力は、ある種の「民族」のような強固さで、当時はそれについてなんにも思っていなかったというか、いや、厳密に言うと思ってるんだけど、その一種「異様」にすら感じる空気の正体がなんなのか分からなかったし、それをいったいどう表現すれば良いのかという言葉も持っていませんでした。

今ならそれがなんなのかなんとなく分かるし、時々友達とも「うちの学校でもそういうのあった」という話になったりもするんですけど、それをここに書くと物議を醸しそうなのでやめておくとして、いや、ひとつだけ言うと、ある集落の中での「同族意識」は、同時にその「外」に対しておそらく本能的に敵対心を芽生えさせるのかなと。それが顕在化するのは、言わば防衛本能で、そうなるのって、良いとか悪いとかはさておいて、自然なことなんだろうねと、それが今なら分かる気がする、みたいな話を友達としたのでした。で、ぶっちゃけ言うと、当時はその徒党組んでる感が「キモかった」と。

学校のような、分母の多い場所で占める「頭数」の多さと言うのは、全体に確実に影響を及ぼしますよね。
結果的にうちの中学では、C小学校出身者が団体で主張することが、コンセンサスのようになっていました。ように、っていうか、実際そうなっていました。「14歳の罪」に書いたようなことはまさにそうで、誰が「シカト」の標的になるのか、そういうのも、多数に倣うという感じ。

つまりは、学校内でコンセンサスになっていたことのいろいろが「ヤ〜」な感じだったから、中学時代の記憶が全体的に「ヤ〜」な印象になっているんだと思います。「ヤ〜」だから、「中学時代の記憶」に「思い出」という言葉を、あんまり使いたくないくらいです。

まあでもそれでも、今回「エヴリシング・フロウズ」を読んでいたときに、すっかり忘れていたある出来事を思い出しました。

中学時代の最後に私が好きになった、スズキくんという男の子のこと。
スズキくんは、私より13cmも背が低い男の子でした。
中学3年生のときの私の身長は163cm。なので、私が特別大きかったわけではなく、スズキくんが他の男の子と比べても格段に小柄だったのです。

頭が良くて弁が立ち、スパスパと辛辣なことを言うんだけど、下品なことは決して言わない男の子でした。
スズキくんは、最大勢力であったC小学校の出身者でしたが、高学年のときに関東から転入してきた子で、独特の立ち位置に居ました。

ともすれば「チビ」といじられてもおかしくないくらいの小柄さでしたが、私たちとは明らかに違う「関東の言葉」と、成績の良さ、加えて運動も出来たことから、決して揚げ足を取られたりはせず、シニカルクレバーな物言いで、ヒエラルキーやらコンセンサスやらおかまいなしに物申すときは物申す、しかもそれが許される、というような子でした。
それこそ「14歳の罪」に書いたような「馬鹿な男子」とは線を画していて、私はそんなところを好きになったんだと思います。

私中学3年生、思春期まっただ中というのに、スズキくんに対しては全く「照れ」というものがなく、スズキくんが歯に衣着せぬ辛辣さで正面から私のことを拒否ってくるのをいいことに(?)、どストレートに好意をあらわにしており、

奈「いいじゃん」

ス「いやです」

のような問答を毎日のようにしていて、要は私先攻の「好き!」とスズキくん後攻(?)の「断る!」みたいなのが「日課」になっていました。

だけど、めげるどころかそんなやり取りすら当時の私には楽しくて、というかむしろ、「俺も」とか言われた日には、その瞬間に私の「照れスイッチ」が入って、「や、そう言われると困るんだけど////」って、急に恥ずかしくてもう何も言えない!みたいなことになっていたと思います。笑


スズキくんは、中学校を卒業したらご両親の都合で神戸に行くことが決まっていて、当然、高校も神戸の高校を受験していました。

卒業式の日、語尾に「(笑)」がつくような、ほとんど冷やかしめいた口調で

奈「スズキくんボタンちょうだいよ」

と言ったら

ス「いやです」

と案の定摩擦なく断られ、だけどスズキくんのことだからたぶんそう言うだろうと思っていた私は、期待もしていなければ傷つくこともなく、「じゃあせめて一緒に写真撮ろ〜」と言って、一緒に写真を撮りました。

正門の前は記念撮影をする卒業生や先生や保護者で溢れていて、私も同級生のみんなと一通り写真を撮り終えたあと、卒業式に出席してくれていた母と一緒に門を出て、学校を後にしました。

散り散りになって帰って行く友達に、卒業証書入りの筒を持ったまま「またねー」と手を振ると、何やら小さな音が鳴っているような気がしました。

手を大きく上下に振ってみると、筒の底でカラカラと何かが転がる音がしました。
不思議に思って蓋を開け、筒を傾けてみると、中からコロンと丸いものが出てきました。

それを見て、私は思わず吹き出して、そして「いったいつのまに?」と驚いたことを覚えています。

中から出てきたのは学生服のボタンで、思い当たる持ち主は一人しか居ませんでした。




こんな「キャー!!!///」なことをすっかり忘れていたとは、インナー乙女失格。

いや、当時は、しばらくの間何度も何度も反芻するくらいに浮き足立った出来事だったはずだし、実際にそうしていたような気がする、ってこともおぼろに覚えているのですが、その後私は女子高に進学して、そしてこの女子高が楽しすぎて、スズキくんのこともボタンのことも、全く思い出さなくなっていました。

私は津村さんの描く「働く人」の社会や世界が好きで、それゆえ「働く人」を登場人物にしたものに期待をしてしまっているところもあり、「エヴリシング・フロウズ」の概要を見たときには、「中学生か〜」と正直ちょっと不満に思いながら読みはじめたのですが、「なんか、ヤ〜」な印象しかなかった中学時代に、こんな「キャー!!!///」なことがちゃんとあったことを思い出せたのは、この本のおかげです。笑

あ!あと、「14歳の罪」に、中学時代、休み時間になるたびに友達と手紙の交換をするのが流行った、っていうことを書いているんですが、そういやその手紙の折り方もいろいろあったな〜、どんなんがあったっけー?と気になりはじめ、記憶をたどっていたら無性に折りたくなってきて、本を読み終えた早朝5時台におもむろに。




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もうこのビジュアルのなつかしさに一人で爆笑して大盛り上がり。(朝5時。そして32歳)

もうノリにノリすぎてヤル気出しすぎる始末。↓



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色鉛筆で背景黒く塗りながら「わたしなにやってんのかな」とは思いましたけど、なんか、無性に楽しかった。

なんでKISSなのかは私にもよくわかりません。



「エヴリシング・フロウズ」は、全編通して「快晴」な感じの話ではなくて、受験生の焦燥感、大人になる過渡期にある、「どこにも行けない」閉塞感や、親の傘下にいるしかない不甲斐なさ、無力感などなどを、「鮮烈な痛み」というより、指の逆剥けのようにじわじわ感じる作品ですが、読後感は決して悪くないのです。それは、私が今まで読んできた津村作品とも共通しています。

私が今までに読んだ津村作品は

ポトスライムの舟
カソウスキの行方
ワーカーズ・ダイジェスト
そしてエッセイ集のやりたいことは二度寝だけ

で、いずれも、今回冒頭の方で書いた「物語の白眉とは呼べないような細かい部分」で、忘れていたことを思い出させたり、見過ごすような「今」の何かにスポットを当てたり、そして、爆笑も号泣もしないけど、なんだか「悪くない。うん、悪くない」、そんな気持ちにさせてくれる作品たちです。

あ、でも「やりたいことは二度寝だけ」というエッセイでは、結構「ブフー!!!」と吹き出すところがありました。笑

今は、深澤真紀さんとの対談集、ダメをみがく―“女子”の呪いを解く方法を読みはじめたところ。

深澤真紀さんと言えば「草食男子」・「肉食女子」の名付け親。
その経歴にも興味を惹かれますが、深澤さんは、私の大好きな文芸評論家である斎藤美奈子さんのマネジメントをしているそうで、私的にはそこに一番興味を惹かれてしまいました。

そんな深澤さんと津村さんとの対談!?というわけで非常に楽しみにして購入した「ダメをみがく」ですが、序盤にしてすでに、予想通りの手応えを感じております。笑





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