季節外れのサワラ

既出だけど。
今一番聴いてる曲。
BGMにでもしながら読んでいただければ幸いです。









2008年の年の瀬の日記を読み返してみると、とても良い意味での全身粘膜症状を起こしていたから、ヒリつくほどダイレクトに沁みる数々の出来事が待ったなしに決壊寸前の涙腺を刺激し、表面張力で保っているのがやっと、と言った感じだったのに、2009年末は、完全に心がED化していた。

元から読む機能が備わってなかったんじゃないか?って思ってしまうほどまったくもって本が読めなかったし、元から何かを感じる機能が備わってないんじゃないか?って思うほど何を聞いても何を見ても何も感じるものがなくて、年が明けて…いや、年末から、ずっと暗澹たる気持ちで過ごしていました。

自分でも何に対して参ってるのか分からず、その延長線上から抜け出せないまま年が明けたんだけど、年明け早々「失った」と思っていた大きなものが2つも返ってきて、非常に幸先のよいスタートであったはずなのに、それでも全然気分は晴れなかった。

1月も半ばに差し掛かろうとしていたある日、新年の挨拶がてら友人宅へお邪魔する約束を交わしていたので、その日の夕方までに私用を済ませておこうと買いものに出かけたんだけど、その帰りにかねてから調子が悪かった自転車を、自転車屋さんで見てもらった。

簡単な調節で不具合はすぐに直って、「おいくらですか?」とお尋ねしたら、自転車屋さんのおじさんと言うよりはおじちゃんと言いたい風情の親しみやすいおじさんは、「結構です」って言ってはにかんで、無料で修理してくれたのだった。

久しぶりに胸の中があったかくなって、ほんとだったらタクシーで行こうと思っていた友人宅へは、直したての自転車で、年甲斐もなく全力で立ち漕ぎしながら向かった。

大きな公園沿いを自転車で走っていたら等間隔に植えられている柳の木が見えて、その光景を見た時にふと、まだ実家で暮らしていた時のことを思い出した。

終電を逃してしまった日には、ときどき、直でタクシーに乗らず、歩けるところまで歩いて帰ることも多かったんだけど、福岡の「大濠公園」という場所には友人宅の近くと同じように等間隔で柳の木が植えられていて、柳の木が連なる遊歩道は、終電を逃したあたしの帰り道だった。

規則正しい間隔で並ぶ柳の木は、どれだけ酔っ払っている時でもあたしの視界に入りこんできて、いつも何かしらの感情を喚起させた。ほとんどは「恐ろしく」感じることの方が多かったんだけど、気持ちが穏やかな時には静かな夜の中ひっそりと佇む柳の木から厳粛な空気を感じることもあって、そんな時にはおどろどろしいはずの柳の木が神聖なものに見えたりもした。

いつもはタクシーだったとは言え、友人宅にはもう何度も通っていて、すなわち、あたしはそれまでに柳の木の前を何度も通過しているはずなのに、あたしはその日、自転車で通過するまで柳の木の存在に気付いていなかった。

柳の木によってもたらされるなにがしかの感情があたしにとって愉快なものであるのか、そうでないのか、という話は別として、単純に、柳の木の存在を認めた時にはいつも気持ちの水面に小石を投げられるような感覚があって、少なくとも数年前までのあたしは、柳の木を視界にとらえれば必ず「何か」を感じてきたはずなのに、何度も通った道で何度も視界に入っていたはずの柳の木の存在にその日まで気づいていなかったという事実は、自分のアンテナの劣化を痛感するに等しく、愕然とした。

年末から続く気持ちの不感症化と照らし合わせて考えてみても、これが、老いってことなのかなって、こうやって自分はどんどん鈍感な人間になってしまうのかなって、こうやって徐々に周波数がズレていって、聞き取れていたはずのものが聞こえなくなっていくのかなって思ったら、膝から崩れ落ちそうなくらい絶望的な気持ちになった。

あたし自身、何に対してこんなにも虚無感と倦怠感を感じてるのか全く分からなくて、誰かと居れば平気なんだけど一人になると猛烈に心もとなくて、このぼんやりとした焦点の定まらなさや正体の分からない恐怖心は、一体何が起因しているんだろうって考えても答えなど出ず、きっと一過性のものだって自分には散々言い聞かせたし、これまでだって同じように穴の底に居ると感じることはあって、それでも浮上してきたのだからきっと今回も大丈夫、って思っても、今回の闇の得体の知れなさにはまるで既視感がなく、特効薬のない新種の難病に冒されたような絶望感に包囲されて抜け出せる希望が全く持てず、出口が見えなくて途方に暮れていた。

それが、1月も終わろうとする月末のある日、転機が訪れた。
極私的なことだから詳細には触れないけど、あたしは今、自分の存在そのものの査定結果を待っているような状況下に居て、特別意識しているつもりはなかったけど、どうやらその「結果待ち」の状況が自分で思っていた以上に心に負荷をかけていたよう。

まだ最終的な結果は出てないけど、途中経過を聞いたとき、そしてそれが、あたしにとって涙が出るくらいに嬉しい評価だったのを目の当たりにしたとき、今までの地を這うようなテンションはなんだったんだろう?っていうくらい、前傾姿勢だった体がぐーっと持ち上がって、視界が開けた。

あいちんのCDがリリースされたのとあたしにとって嬉しい知らせが耳に入ってきたのはほぼ同時期で、和可ちゃんとあいちんと3人でお祝いのシャンパンを飲みに行った。

その時に交わした会話は、「この先、ドン詰まっても生きていける!」と思えるような、何かあった時に何度でも振り返りたくなるようなもので、心の中に大事な付箋が一つついた。

そんな夜を過ごしたことや、大好きな友達の結婚式を迎えたことが重なって、止まっていた歯車がゆっくりと回り出し、おめでたくあったかい色で体が包まれだすと、にわかに体感温度が上昇し始めて、熱のこもった体で、そしてのその目で見る世界には確かに既視感があり、それが、一昨年の年末に自分が見ていた世界ととてもよく似ている事に気付いた。

汗っかきのくせに冷え性のあたしは、おそらく、自律神経が弱い。
自律神経が弱いと鬱になりやすくなるよ、と人に言われたことがある。
寒い時、無性に心許なくなることや、訳も分からず唐突に絶望的な気持ちになるのはそのせいなのかと、「冷えは万病のもと」とはよく言ったもんだなと思った。

2008年の12月、あたしは非常に高い温度で、こういうことをブログに書いた。

1年間の中で、流す涙の量と言うのは決まっているんじゃないかと思う。流さなければいけない、ノルマのような量があるのではないかと思う。
それで、今年1年の間、うまいこと配分出来なかった、余った涙たちが繰り越されているんじゃないかと思う。
だから、年の瀬のこの時期に、ある意味年末調整みたいな感じで、帳尻を合わせようと、11月までの間に流し切れてなかった涙たちが怒涛のように流れている日々。
12月に入ってからと言うもの常に目頭がうずうずしてて、表面張力で保っているような感じがする。だからちょっとつついただけでドバー!ってのを繰り返してて、ほんと、毎日のように泣いている。


それと同じ状況にならなかった2009年の12月、あたしは自分の心が劣化している気がして、老いゆく自分への嫌悪感と、在りたい自分と在れない自分との乖離に罪悪感のような居心地の悪さと焦燥感を感じていたんだけど、約1か月遅れでやってきた全身粘膜期の渦中でゆっくりと呼吸を開始したら、唐突に、「鰆(サワラ)」のことを思い出した。
12月〜2月が旬とされる鰆だけど、昨年だったか、妙な季節にご飯屋さんで見かけたことがある。

鰆ですらカレンダーと並走してないんだもん。自分の感受性のピークが絶対12月に来るなんて、何を根拠に言えていたんだろうって、思った。自分の感情の周期がカレンダーに沿わないのは当たり前のことだって、しごく単純な事に、今更ながら気付いた。

季節外れの鰆のように、あたしは今、遅れてやってきた全身粘膜期の中で、光合成で酸素を取り入れるかのごとく、良くも悪くも躍動感と臨場感のあり過ぎるくっきりとした痛みや喜びを全身で受け止めています。

自意識過剰な上に心のプロテクト方法を習得していないあたしは、考えてもどうしようもない思考の森の中で「立ち入り禁止」の看板を無視して踏み込み、案の定深手を負って帰ってくることがままある。

そんな要領の悪さや頭の悪さや聞き分けの悪さを総称して人は「子ども」と呼ぶのだろうけど、それならば、あたしはまだ子どもでよくて、この先も、当分の間は積雪と台風にはしゃぐバカでいたいし、柳の木を見れば何かしら感じる心を持ち続けていたいと、そう思うのでした。





左サイドバーに載せてますが

こないだ買ったChiMera park(キメラパーク)のチュニック。

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色合いと言い、素材と言い、もう、春。



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